不朽の名作から最新作まで、子どもたちの「ココロのスキル」をはぐくむ絵本を紹介するコラム。今回は世界中で人気の「どんなにきみがすきだかあててごらん」シリーズの、夏のある日を舞台にした一冊『どんなにきみがすきだかあててごらん なつのおはなし』をご紹介。本作のテーマは「色」。シリーズファンの期待を裏切らない、やさしくてあたたかな物語です。
みどころ
2匹のノウサギがお互いの好きな色について話している。「どのいろがすき?」ではなく「どのあおいろがすき?」と訊くところがとても好きだ。何と答えようか悩むデカウサギの前には、青色のもの―蝶や花、鳥、そして広い空と足元を流れる川が描かれている。言葉にすればたった一言「青色」だが、空はちょっと薄く、花は濃い青色をしていて、いろんな種類の青色があることに気づかされる。
ノウサギたちの目にはいろんな種類の青色が見えている。そのことに、とてもわくわくする。もちろん私も、色の名前が細かく分類されていることは知識として知ってはいるのだけれど、あらためて、いろんな青色があることを頭において辺りを見渡してみると、そこらじゅうとても色鮮やかに見えてくるのだ。
この作品を読んで、自分が大人になって新しく外国語の学習をはじめたばかりの頃を思い出した。
大学の授業をきっかけに学びはじめたその言語には「青色」を表す単語がたくさんある。晴れた秋空のような色を基準として、うすい青、少し暗い青、とても暗い青のほか、ホウレンソウのような濃い緑色や初夏の芝生のような黄緑色も「青色」に含まれる。それぞれ異なる単語があるので、その言語で「青色」を伝えたければ“どんなふうに青いのか”を見極めなければならない。私が知る日本語の「青色」がいくつも枝分かれしていくことで、身の回りのあらゆる色がぐんと彩度を上げて、鮮やかに見えるようになる。見方を少し変えただけなのに、とても不思議で、とても豊かだと思った。
本作の「どんなあおいろがすき?」というフレーズは、当たり前の風景を豊かに彩るきっかけをくれる。そうやって小さな楽しみを見つける力を、子ども達には身につけてほしいなと思う。
あらすじ(出版社Webサイトより)
あお、あか、きいろ…なつののはらは、いろいろないろでいっぱいです。ちいさなちゃいろいノウサギが、すきないろは? 大人気、二わのウサギのシリーズ。あたたかくやさしい愛にみちたお話。
書名:どんなにきみがすきだかあててごらん なつのおはなし
作:サム・マクブラットニィ
絵:アニタ・ジェラーム
訳:小川 仁央
出版社: 評論社
発行日: 2008年01月
ISBN:9784566008687
サイズ:18.2×16.8cm
ページ数:24ページ