英語教育の第一歩として英語の絵本をとり入れたいと考えているお父さんお母さんも多いのでは? でも、どんな絵本を選べばいいのか、どのように読み聞かせればいいのか、分からないことだらけですよね。そこで、自ら英語での子育てを経験し、サイト「英語de子育て」を運営している井原香織さんにコツを伺いました。
英語絵本の前にまずは簡単な日常英会話から
英語教育の第一歩として英語絵本を購入し、「さあ、今日からこれを読みましょう!」と読み聞かせを始めても、子どもにとっては意味のわからないエイリアン語を聞かされるようなもので、飽きてしまったり、拒否反応を示してしまうことが多いそう。英語の絵本の読み聞かせを始める前に、まずは親子の日常会話に英語をとり入れて、子どもが英語絵本を受け入れられるベースを作ることがとても大切だと井原さんは言います。
「日常会話がなんとなく分かっているお子さんが同じフレーズが載っている英語絵本を開くという状態と、それまでまったく英語を聞いたことがないお子さんに、いきなり英語絵本を見せて『ほら、これが英語っていうものだよ。読むからね!』という状態では全然アプローチが違うんですよ。
日頃から英語を耳で聞いていて、いくつかの単語やフレーズを知っていたり、親子間で簡単な英会話ができているという状態を作ってからのほうがスムーズなんです。」
家庭で日常英会話のCDやアプリなどをBGM代わりに流し、親がそのフレーズを日常会話で実践的に使うのがいちばん効果的なのだとか。
「パパもママも難しいことを言おうと思わなくても、中高の6年間で習った簡単なフレーズは言えるはずですよね。今は日常英会話のCDやアプリなどいろいろ出ているので、それを1日2時間程度聞く機会を与えれば、お子さんはだいたい覚えちゃいますから。」
「『Good job!』『I’m hungry.』『Let’s go!』『It’s time for bed.』など、日常生活の中で親も一緒に英語を使って、
『うちは、簡単なフレーズだったら日本語と英語どらちもいける家庭だよ』っていうベースを作ってあげると、絵本への興味の持ち方が違ってきます。その状態ができていると子どもは喜んで絵本を読むと思いますよ!」
『もうすぐ夕飯だよ』『手を洗った?』『イスに座って』など、普段よく使うフレーズを英語で100個言えるようになることを目標とすると、親も子もものすごい英語力がつくそう。この日常英会話を始めるのにいちばん適しているのは1歳前後ですが、何歳からでも遅くはないそうです。
英語絵本の選び方とおすすめの絵本
いよいよ英語絵本をとり入れるにあたって、絵本を選ぶときは子どもの興味に合わせるのがいちばん。動物が好きだったら動物の絵本、電車が好きだったらトーマスの絵本など、興味のある内容のほうがより絵本の世界に入りやすいそうです。
また、どれを選ぶと良いか迷うパパ、ママのために、井原さんが特におすすめの絵本を教えてもらいました。
My First Word Lift the Flap Board Book
「犬の絵を指さして『dog』、猫の絵を指さして『cat』など、最初はゲーム感覚で英単語を覚えられるワードブック(単語の絵本)から入るといいと思います。こういう単語の絵本だったら2歳からでも始められます。」
Maisy’s Bedtime (Maisy Books (Paperback))
「とても人気のある絵本で、特に英語子育て中のママの支持を得ています。短いストーリーの中に『寝る時間だよ』『パジャマを着る』などの日常表現が凝縮されている点が魅力です。お子さんもこの絵本を通して生活の基本表現をすぐに覚えると思いますよ。」
Oxford Reading Tree
「イギリスの小学校の国語の教科書にも使われているほどの定番シリーズで、私のいちばんのおすすめ。キッパーという名前の男の子が主人公で、絵本の中でいろいろなことに挑戦していきます。ステージ1からステージ10くらいまであって、レベルが上がるにつれてだんだん難しくなっていくので、子どもの英語力もそれに合わせて徐々に上がっていきます。CDや日本語解説付きのセットがあるので、そちらをおすすめします。」
以上2つのような、 ストーリーのある英語絵本をとり入れるのは、文字に興味を持ち始める3歳頃からがいいそうです。また、 たくさんの絵本を与えることも大切なのだそう。
英語絵本の読み聞かせのコツは?
では、実際に英語絵本を読み聞かせるとなったときには、どのように読めばいいのでしょうか? 井原さんは
「フォニックス」をとり入れるといいと言います。「フォニックス」とは、アルファベットひとつひとつの発音を覚えることによって、知らない単語の綴りが出てきたときに正しく発音しながら読めるようになる、という学習法です。
「アルファベットの読み方だと、『A』は『エー』、『B』は『ビー』なんですけど、フォニックスではそれを『A=アッ』『B=ブッ』と子音の読み方をするんです。アルファベット読みだけを覚えていると、例えば、「at」という単語を『エーティー』と読んでしまいますよね。フォニックスで『A=アッ』『T=トゥッ』と覚えていれば、それを組み合わせて『アット』と読むことができるんです。」
英語絵本を読むときにこの「フォニックス」をとり入れることで、子どもが英単語を発音しながら読むことができるようになるのだそうです。
「絵本のページのいちばん最初の部分、例えば『He』だったらHのところを指さして、『ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ』って読むんです。それでHは『ヒ』ていう音なんだということを教えてから、そのまま『He is hungry.』と続けるんです。そのページはそれで終わり。また次のページをめくって、最初の単語が『She』だったら『ス、ス、ス、ス、ス』とSの読み方を教えて、『She took the banana.』と続けるんです。」
「フレーズごとに全部やると大変ですけど、
最初のページの最初の文字だけだったらお子さんも集中力を切らさず、どんな音だったかを覚えられると思います。うちの息子は4歳くらいから始めました。」
親の英語の発音が悪くても子どもに影響なし
英語を話すことに対してコンプレックスがあって英語絵本を読み聞かせる自信がなかったり、「発音が悪くても大丈夫?」などと心配しているお父さんお母さんも多いのではないでしょうか?
「CD付きの絵本や英語のDVDなど、今はネイティブな発音を聞く機会がたくさんあって、子どもはそれを聞いて正しい発音を覚えられるので、親の影響力を心配しなくても大丈夫ですし、むしろ日本人らしい発音でもいいと思いますよ。」
「『自分は発音が悪いから』と敬遠していてもお子さんは英語が話せるようになりませんからね。日本人らしい発音でも『レッツゴー!』『アイムハングリー!』って堂々と発音して、
『この程度でいいんだよ』『日本人っていうのはこんな感じで発音するんだよ』って、教えてあげるほうが親のコンプレックスを見せるよりいいと思います。
「それに、今まで何人も生徒さんを見てきましたが、子どもが親の発音をマネして困ったというケースはなかったですから!」
英語絵本の読み聞かせの効果とは?
最後に、英語の絵本を読むことによって得られる効果とはどんなことがあるのでしょうか?
「親子で簡単な日常英会話に親しんでから英語絵本の読み聞かせを始めると、
絵本を通じて語彙力が増えたり、表現の幅が広がりますね。英語を話すときの文法の構築にもとても役に立つと思います。息子は中学3年生になりましたが、英語の授業はだいぶラクをしていますよ。」
なるほど! うちの息子はもうすぐ3歳。まずは単語の絵本と日常の基本英会話から始めてベースを作ったら、ストーリーのある英語絵本の読み聞かせを始めようと思います。「勉強」としてしまうと苦しくなって続かなさそうなので、親子で楽しみながら英語を覚えていけるといいですね。
お話を聞いたのは…
井原 香織さん
2001年の長男の出産を機に英語で子育てを決意し、実践。現在は「株式会社できるとこから」の代表取締役。「子どもに英語力をつけさせたいけど教材にあまりお金をかけたくない」という親子を応援するサイト「英語de子育て」の代表も務め、出張講座やレッスン、英語教材の開発、販売を手掛けている。「英語de子育て」に参加するママと一緒に開発した、朝から寝るまでの日常英会話シリーズのCDとアプリは、英語育児を目指す家庭のバイブルとなっている。著書に「井原さんちの英語で子育て」(学研)がある。
「英語de子育て」
ライター紹介
依知川 亜希子
1973年横浜・元町生まれ。映画雑誌のデザイナー、ファッション誌の編集者を経て、フリーランスの編集&ライターに。2012年5月に長男を出産。休日はマイケル・ジャクソンを敬愛する音楽好きな息子(2歳3ヶ月で卒乳)を連れて、公共交通機関を使ってどこまで出かけられるか挑戦中。安心安全な食事、家族旅行、低予算だけど綿素材でかわいい子どもファッション、第2子どうする? について思いをめぐらせる日々。
※2015年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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