利用料金で10万超も!?子どものオンラインゲームトラブル

クレジットカード会社から身に覚えのない請求があり、調べてみるとじつは子どもが親に内緒でオンラインゲームアイテムを購入していたという話を最近よく耳にします。普段から携帯ゲームやスマートフォンを使う子どもを持つ親としてはとても心配。このようなトラブルを防ぐためにはどうすればいいのかを専門家に聞きました。

ゲーム内の課金アイテムで高額請求が多発中!

独立行政法人国民生活センターには、子どものオンラインゲームに関するトラブルの相談が数多く報告されています。なかでも多いのが、金銭に関するトラブル。母親のタブレットでオンラインゲームをしていた6歳の娘が、母親の知らない間に10万円以上のアイテム購入をしていたという事例もあり、同センターからは注意を呼びかけられています。

千葉大学教育学部教授の藤川大祐先生によると「インターネットがつながる機器にはフィルタリングをかける、プリペイドカードは親が管理するなど、親の許可なくネット使用や課金ができないように、オンラインゲームの使用環境を整えて管理することが必須です」とのこと。

それだけでなく「子どもたちが夢中になる理由を知ることが、オンラインゲームのトラブルを防止するヒントになる」と藤川先生は言います。

現実世界のさまざまな遊びや体験がゲームトラブルを防ぐ

そもそもなぜ、ゲームは子どもたちを夢中にさせるのでしょうか?

「昨今のゲームは子どもたちにとって非常に魅力的。ゲーム内の困難なステージや達成条件をクリアすれば、その内容に応じた達成感が味わえます。それがプレイヤーの意欲を引き出し、さらに努力を重ねるきっかけになります。努力に応じた達成と感動に満たされていく。その構造に子供たちは魅了されるのです。」

「あともう少しで達成できる…」そんな意欲をあおられて、子どもたちは高額な課金アイテムを無断で購入してしまったのでしょう。

藤川先生は「意欲や努力、達成感、感動といったものが得られるのがゲームの魅力ですが、それらが体験できるのはけっしてゲームの世界に限ったことではないということを、子どもに教えてあげてほしい」と語ります。

現実世界はゲーム以上におもしろい! そんな体験を子どもと分かち合うことが大切です。例えばスポーツやキャンプといったイベントに出かける。ボールを蹴ったり、テントを組み立てたりすることを、子どもをメインに大人はサポートにまわって一緒にやってみる。そんな苦労を越えて得られる現実の達成感は、意欲的に生きる力につながります。」

親子で一緒に達成感を得た経験を積み重ねることで、やがてそれが親子の信頼関係へとつながります。信頼関係を構築できれば、ゲームをプレイ中に何かあったときに、「パパとママに相談しよう」と思える関係になり、トラブルの早期発見と解決にもつながるかもしれませんね。

「やるべきことができているか?」でルールを決める

ゲームとの関わり方を子どもと話し合い、ルールを決めることも大切です。

「その際、『やるべきこと』を軸に、時間を管理する意識を育むことが大切。『1日30分』といった制限的なルール決めではなく、『宿題を終えてから夕食までの間』というように遊ぶ時間帯を決めることです。そうすることで、“やるべきこと=生活習慣を守る”という意識を育むことができます。」

同様に、 “やるべきこと=学習時間の確保”や、“やるべきこと=睡眠時間の確保”といった判断から、子どもと話し合う機会も作ることができます。

「具体的な時間の使い方を話し合うことは、やみくもにゲームを制限することとは異なります。子どもにとって、『自分の好きなこと=ゲームを認めてもらえる』という信頼感を壊さず、やるべきことを意識させる。これが大切です。」

そんな関係性のもとで約束されたルールならば、親に隠れてでもゲームをしたい気持ちは薄れて、トラブル回避につながるのかもしれません。

ペアレンタルコントロールと同様に親子の信頼構築を大切に

子どもとオンラインゲームの関わりを整え・管理する「ペアレンタルコントロール(ネットワーク機器の利用を、親が監視して制限すること)」は、トラブル防止に有効な手立てといえます。携帯ゲームやパソコン自体にも、そういった機能が組み込まれているのでぜひ活用してください。

親ができるペアレンタルコントロールの具体例

  • インターネットがつながる機器にはフィルタリング(有害サイトにアクセスできない仕組み)をかける
  • 親の許可なくネット使用や課金ができないようパスワードをかけておく
  • ソフトのパッケージやアプリのダウンロード時に表示されている年齢制限を確認する

親がゲーム内容や課金の仕組みを確認し、IDやパスワードを子どもに利用させない。また、クレジットカードの管理を充分に行う。これだけでもトラブル防止には有効です。

「制限しなければ、叱らなくてはという“親目線”で伝えるのではなく、ゲーム好きな子どもの意欲や努力、達成感、感動を現実世界と結びつけてあげること。そこで培われる信頼が、結果的にオンラインゲームトラブルから子どもを守ることにもつながります。」

ゲームのしすぎや課金トラブルなどの心配から、ついつい「ゲームはだめ!」と制限したくなってしまいますが、もっと前向きに問題解決につなげたいもの。現実世界の「一緒にお出かけ」を、ゲーム好きな子どもとの信頼構築に役立てて、子どもとのいい関係を育てたいですね。

お話を聞いたのは…
藤川 大祐先生
千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)。内閣府「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」座長代理、日本メディアリテラシー教育推進機構理事長などを務めながら、携帯、ネットと安全に関わるための活動、発信を行う。著書に『スマホ・パソコン・SNS よく知ってネットを使おう! こどもあんぜん図鑑』講談社(監修)、『スマホ時代の親たちへ』(大空出版)

ライター紹介
笹谷 優
フリーランスのライター・プランナーとして活動中。フードコーディネータとしても活動しており、「食」との関連から歴史・文化・経済・農業・育児・シニア・健康など、幅広く執筆。約20年間の京都・大阪在住を経て、名古屋に拠点を変えたばかり。

※2016年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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