楽しみながら賢くなれる!親子で始める「あやとり」

かつては「女の子の手遊び」と捉えられがちでしたが、今では年齢・性別を越えた遊びとして定着したあやとり。近年では手先を動かすことが脳の活性化につながるとされ、福祉の現場や、幼稚園、小学校などでも活用されています。子どもにとっての魅力や、脳の成長を促す効果的な遊ばせ方を第一人者にお聞きしました。

あやとり遊びが子どもに与える影響

今回お話を伺ったのは、40年以上前に科学雑誌の依頼がきっかけで海外のあやとりに出会い、その魅力にとりつかれたという野口廣さん。数学オリンピック財団の理事長を長年務めた数学者です。

折り紙や粘土、パズルなど手先を使う遊びはいろいろありますが、あやとりが脳への刺激に関して他より優れている点はあるのでしょうか。

「手を使う遊びのほとんどは、決まった指を使っていくつかの同じ動作を繰り返すものが多いと思いますが、あやとりの場合はすべての指を使って前後左右に曲げたり伸ばしたりひねったりと多種多様な動きをします。また、指だけでなく、手全体や手首までもぐるぐると回したり、腕を近づけたり離したり上下や左右に広げたり…このような手指の複雑な動きは、心身の成長に大きな影響を与えます。」

確かに、あやとりには独特の動きがあります。こうした複雑な動きは、具体的に子どもの成長にどんな良い影響をもたらすのでしょうか。

「身体面では、手指の運動機能が発達して器用になります。また、手指の動きが脳の働きを促進させます。精神面では、ひも1本で作った輪でさまざまな形を作ることで、記憶力や思考力、想像力、芸術性を育てるでしょう。また、地道な動作を重ねたり、最初はうまく行かなくてもくり返し挑戦することによってやりとげる忍耐力も養われ、あやとりが作られた背景などへの知的興味も大きく広がります。」

また、野口さんが主宰する「あやとりの会」に参加している子どもたちには、不思議と算数好きがたくさんいるそう。世界のあやとりには造形が美しいだけでなく、形を作っていくプロセスに数学的要素が含まれるものも多いそうなので、関係があるのかもしれません。

効果的な遊ばせ方と、親にできるサポート

何歳から始めるといい?

子どもにもいい影響がたくさんのあやとりですが、何歳くらいで始めるのがいいのでしょうか。

「個人差がありますが、あやとりを見て興味を示したらいいタイミングです。かなり小さいうちは、親があやとりを見せて面白さを示し、3歳くらいになってひもを持たせられるようになったら一緒にやってみます。最初はあやとりにはならないかもしれませんが、まずはひもで遊ぶ楽しさを覚えさせましょう。この段階では親が一緒に遊んであげることが大切です。」

簡単なものから少しずつレベルアップ

たとえ最初から思った形にならなくても、ひもを介して親子でコミュニケーションするのはとても楽しいもの。あやとりには、できあがった形を楽しむもののほか、手品のようなあやとりや、形が変わったり動きを楽しめたりものも多くあります。目の前でつくって動かしてあげたら、小さな赤ちゃんでも興味を持ってくれそうですね。

「自分で形を作ることに興味を持ち始めたら、最初はごく簡単なもの教えます。もし覚えられたら何度もほめてあげ、もっと知りたいようなら別のものを教える…というように、簡単なものから無理なくレベルアップしていきます。私の本でもそのように進められるようになっています。」

年齢ごとに気をつけることは?

大人も子どもも楽しめるあやとりですが、子どもの場合、とくに気をつけるポイントはどんなことでしょうか。

「小さいお子さんの場合は、ひもを首に巻きつけないようにすることが一番大切です。ひもをあやとり以外の遊びに使わないように注意して、年齢やレベルに応じて、ひもの長さを調節しましょう。」

実際にやってみましょう

あやとりに使うひもは基本的には家にあるものでよいですが、使いやすい長さと素材があります。

まずは長さ。一般的には両手を水平に広げた指先から指先までが、その人に適した長さと言われています。また、子どもなら140〜160cm、大人なら180cmくらいあれば複雑なものも作れます。

素材は綿やアクリルなど。太さ2〜3mm程度の手芸用コードなどが適しています。やわらかすぎると形を作りにくいので、しっかり目がつまってすべりがよいものがおすすめです。

ひものとり方は、親や祖父母が記憶を頼りに教えてあげるのもいいですが、やはり参考になるものがあると安心です。絵本風のもの、大人向けのもの、DVDつき、ひもつきなど、あやとりの本は数多くあるので、子どもの年齢やレベル、興味に合わせて選びましょう。

今回の記事をきっかけに野口さんの本を何冊か手に取りましたが、自分でもとった記憶がある簡単なものから、世界各地に伝わるあやとり、二人以上でとるあやとり、6mもの長さのひもでとる大作まで、とても奥深い世界に驚きました。大人も一緒に楽しみながら、子どもの世界や可能性を広げてあげたいですね。

※参考書籍

お話を聞いたのは…
野口 廣さん
1925年東京生まれ。理学博士。数学オリンピック財団元理事長。東北帝国大学数学科卒業。ミシガン大学留学。イリノイ大学客員教授、早稲田大学理工学部教授を経て、現在、同大学名誉教授。「国際あやとり協会」の設立・運営にも尽力し、同協会の顧問として世界のあやとり文化を日本に紹介している。
国際あやとり協会

ライター紹介
高柳 涼子
雑誌編集部勤務を経てフリーランスに。ライティングと校正を中心に、ときどき編集もやる3児の母です。これまでに関わった分野は、求人、進学、ウェディング、アート、手芸、田舎暮らし、食育、仏教、料理など。

※2015年11月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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