保育園で実践。すぐに手や口を出さない「見守る育児」が自主性を育てる

子どもが失敗しないように、子どもが正解へ近道できるように、親はつい手や口を出してしまいがちです。しかし、それは子ども自身で考えて乗り越えられる可能性を奪う行為かもしれません。子どもが自らの力を発揮できる環境を用意して、子どもを信じて見守る育児はどのようにしたらいいのでしょうか?自らも5歳の男の子と2歳の女の子のお父さんであり、「見守る保育」を実践している『金沢八景保育園』の石井望園長にお話を伺いました。


「見守る」ことは「肯定的に捉える」こと

新しい保育のカタチ「見守る保育」とは?

年齢別にクラス編成されていた伝統的な保育スタイルではなく、異年齢保育を基本とし、子どもの自主性を重視した「見守る保育」が注目され始めています。それはどういった内容なのでしょうか?

「『見守る保育』とは、大人主導ではなくて、子ども一人ひとりの姿を見ながら対応するということです。保育者が『こうしてほしい』と思って提案しても、子どもがその通りに動かないときがあります。それも成長のひとつの過程として受け入れて、プロセスを見守っています。ただ、『見守る』ためには、見守るための環境を作ることがまず大切です。」

金沢八景保育園では、『見守る保育』を実践するために、子どもを年齢の枠だけで見ない異年齢保育を実施。クラスの区切りがなく0歳児~2歳児は同じ部屋、3歳児~6歳児は同じ部屋で過ごすことによって、『年下の子が年上の子をお手本にする』『年上の子が年下の子の面倒をみる』という関係性が自然とできるのだそう。子どもが子ども社会の中で発達を遂げていけるような環境作りをしながら、園児一人ひとりの様子を見守っています。

「見守る」ことで子どもに自主性が芽生える

では、「見守る」ことを家庭で実践することによって、親子に生まれるメリットはどんなことなのでしょうか?

「見守ることを実践すると、親子の間に程よい距離感が生まれます。それによって、親も心に余裕を持つことができるのです。また、『ああしなさい、こうしなさい』『これはやっちゃダメよ』とあまりに過干渉過ぎると、すべて親の指示通りにしか動けない子に育ってしまう可能性があります。親はそれを見て『うちの子はできている』と勘違いしがちなんですが、実は親の指示がないと動けない、つまり自主性が育っていないことになかなか気づかないんですよね。一方、あまり干渉しすぎずに接していると、子どもは自分で考えて行動する習慣がつき、それによって冒険心や探究心、興味関心が育まれると思います。」

失敗してもOK! 経験させることが大切

「本当に危ないときや困っているときはすぐに駆けつけて手や口を出すのはもちろん必要です。でも

普段は『どうすればうまくいくかな?』と子どもの意欲や探究心を育むことが大切。実際に子どもがやってみて、できるまでのプロセスが重要なので、子どもの意思を無視して何でもやってあげたり、一から十まで教えてしまうのはもったいないんです。やってみて、それができなくてもOK。失敗を経験することは成長に必要なことで、そこから子どもは何かを得て、次に活かすことができますから。」

親は「我が子が失敗しないように」と、失敗することを見越して手を出したり口を出したりしてしまいますが、それは子どもの自主性の発達を妨げているかもしれません。


家庭で実践!「見守る育児」のコツ

子ども同士でトラブルになったときの対処法は?

言葉が未発達で自分の気持ちを言葉でうまく表現できない頃は、おもちゃの取り合いで叩いてしまったり、遊びたい気持ちをうまく表現できず突き飛ばしてしまったり。我が子を見守っているがゆえに子ども同士でトラブルになることも。こういう場面では、親はどういった対応をすべきでしょうか?

「そういった場面では、『ダメよ!』とか、『○○ちゃんが使っているでしょ!』と否定的な言葉をかけてしまうことがあると思います。でも親は、否定的に捉えないことと、どちらが悪いと決めつけないことが大切です。パッと見で泣いている子と怒っている子がいたら、怒っている子が悪いんだと決めつけてしまいがちですが。実は最初は怒っている子のほうがやられていて、『やめて』って言えなくて叩いちゃったっていうことも大いにあるんです。そういうときは、叩いてしまった子に対して『最初は○○ちゃんが使っていたんだよね』『○○がしたかったんだよね、その気持ちわかるよ』と気持ちを受け止めてあげて、それから『痛かったよね』って泣いている子の気持ちも受け止めてあげてください。子どものよき理解者になることも見守ることのひとつです。」

「片付けなさい!」ではなく片付けられる環境を作る

ほかにも、「お片付けしよう」と言ってもなかなかな片付けない子どもを見かねて、結局親が片付けてしまうというシーンもよくあります。

「片付けのときに有効なのが、どこに何を片付ければいいのか分かるような目印を作ること。保育園では棚におもちゃの写真を貼って、『この棚にこのおもちゃをしまおうね』と分かるようにしてあるのですが、それは家庭でもできますよね。いちいち親が指示を出さなくても、子どもが自分で判断して行動できるような工夫をしておくことで、親は見守っていられます。それと、やりかけのブロックなどのおもちゃをぐちゃぐちゃに置いてもOKな『ここだけは散らかしておいていいんだよ』っていう場所を作ってあげることも効果的。『次にやりたいんだったらここに置いといていいよ』ってすると、親も気持ちがラクになりますよね。」

実際に手や口を出すタイミングは?

とはいえ、親がどうしても手や口を出したほうがいいタイミングというのもあるのではないでしょうか?その判断のポイントも教えてもらいました。

子どもが『どうすればいい?』と言葉や態度でアドバイスを求めてきたときには、手助けするのがいいと思います。また、泣いたりグズったりしているときは『こっちもおもしろいよ』って子どもがワクワクするような違う道を示すのもいいのではないでしょうか。」

まずは見守るための環境作りをすること、そして、子どもが本当に困ったり助けを求めてきた時には口を出すなどのメリハリも大事なんですね。それでも子どもに対してつい過干渉になってしまうことがあります。そんなとき自分に言い聞かせる魔法の言葉を最後に教えてもらいました。

手や口を出したいときにグッと堪えることができる「魔法の言葉」とは?

『うちの子なら大丈夫!』と信じてあげることですね。大人は先々の見通しが立つけど、子どもは見通しが立たないのは当たり前のこと。大人も子どもも楽しくなる子育ては、ある程度対等じゃないとお互いに辛いですから。あとは『まあ、こんなもんだよ!』って、いい意味で楽観的になること。まだ3年とか5年しか生きていない子どもに対して、親の30年分40年分の想いや培ってきたものをぶつけても分かるわけがないんですから。笑顔でいきましょう!」

確かに、子どもを信頼することで、手や口を出す回数が減りそうです。親子にとって心地良い距離感をとりながら、笑顔で子どもを見守っていきたいですね。

石井望さん
社会福祉法人しののめ会 金沢八景保育園園長。20年ほど前に「見守る保育」を提唱する保育園の園長先生と出会ったことで、今までの保育の内容を見つめ直す。時代の流れとともに保育の内容も変化していくべきという持論から、これまで当たり前とされてきた年齢別のクラス制度を取り払い、異年齢保育を導入。子どもの探究心や冒険心を活かす保育を目指している。
金沢八景保育園公式サイト

ライター紹介
依知川 亜希子
1973年横浜・元町生まれ。映画雑誌のデザイナー、ファッション誌の編集者を経て、フリーランスの編集&ライターに。2012年5月に長男を出産。休日はマイケル・ジャクソンを敬愛する音楽好きな息子(2歳3ヶ月で卒乳)を連れて、公共交通機関を使ってどこまで出かけられるか挑戦中。安心安全な食事、家族旅行、低予算だけど綿素材でかわいい子どもファッション、第2子どうする? について思いをめぐらせる日々。

※こちらは2015年3月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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