好奇心や探究心を育んだ親子時間
未来:アートに関しては、もともと画材などの道具があったとのことですが、ほかに小さな頃から本格的な環境を与えられていた理由はありますか?
(お父様)本人が絵を描くのが好きそうだというのが一番の理由ですが、研究者になるなら絵くらい描けたほうがいいだろうとアドバイスした覚えはあります。空璃は、小学1年生の頃には「魚の研究者になりたい」と夢を語っていたんですよ。
未来:先程、図鑑やテレビ番組で興味を持った魚を見せに出かけていたという話もありましたが、「本物」に触れさせることを意識されていたように感じます。
(お父様)子ども自身が好きなことを探求するために、できるだけのことをしてあげたいという想いはありましたね。私は釣りもしないし、魚や海中生物のことは全く詳しくなかったんですが、毎週末のように海やペットショプに通って空璃と過ごすうちに随分詳しくなったと思います。
未来:子どもの興味関心に合わせて親子でたくさんの時間を過ごしたことで、空璃さんの好奇心がどんどん育まれていったんですね。この作品たちも一緒に作られたものなんですか?
(お父様)これは小学生時代の夏休みの自由工作で、組み合わせた発泡スチロールを削って作った模型です。毎年夏休み前になると「今年はこれが作りたい!」と、そのとき興味のあるものを作ろうとしていたので、作品のアドバイスをしたりしていました。
未来:なんでも親子で一緒に楽しんでこられたというのがよく伝わります。だからこそ、興味を持ったことにここまで熱中することができたわけだ。とはいえ、小さな子どもが一つのことに熱中し続けるのは本当にすごいと思います。何がここまで空璃くんを突き動かしていたんでしょう…。
僕が小学2年生の頃、世界中で海の調査を行っているジャムステック(海洋研究開発機構)が近くの小学校で出張授業を開催したことがあったんです。そのとき聞いたことにすごく刺激を受けて、「ここで勉強したい!」と思うようになりました。
未来:小学2年生で具体的な目標が決まって、そこからブレていないというのがすごいですね。男の子だと、鉄道や車、ゲームにハマったりする時期があったりするイメ-ジですが、他のものにハマったりしたことはないんですか?
(お父様)あまりなかったですね。シーラカンスとかサメとか、海の生物の中でその時々のブームのようなものはありましたが、「魚好き」というのはずっと一貫していました。鉄道博物館ができたときに話題になり連れて行ったことがあるんですが、行列に並んでやっと入った博物館を20分程で飽きて出てきてしまったんです。動物園や水族館なら1日中飽きずにいるような子どもがですよ…。本当に興味がないんだなと思いました(笑)。
未来:なるほど(笑)。では、ジャムステックの出張授業を受けて目標が決まってからは、本当に海一色という感じだったんですね!
ジャムステックの出張授業のときに、そこに来ていた広報の方に話しかけたんです。そしたら小学2年生の子どもが魚について異様に詳しい知識を持っていることに驚いてくれて、ジャムステックに遊びにおいでと誘って頂きました。そこから施設の一般公開日には、毎年遊びに行かせてもらっています。
(お父様)そこでも結構色んな人との繋がりができたよね。一般公開日には、さまざまな研究をしている各分野の専門家もたくさん来るので紹介してもらったり…。
未来:その繋がりを通して、さらに世界が広がっていったんですね。
(お父様)子どもの頃から色んな方に可愛がってもらっていて、人(出会い)には本当に恵まれていると思います。親以外の大人とのコミュニケーションで、刺激されることって多いと思うんです。最初にジャムステックの広報の方とお話したときも、海に関する知識についてすごく褒めてもらったんです。子どもってやっぱり、褒められるとすごく嬉しいんですよね。ましてやその道のプロである専門家に認めてもらったというのは、本人にとってもすごく大きかったようで、そこからガッツリのめり込んでいったような気がします。
未来:たしかに人から褒められたり認められたりする経験は、子どもが伸びるうえでとても大切なことですよね。本などで知識を得るだけでなく、それを活かせる場があったことで、知的好奇心が倍増されたんだと感じました。